今回は医学部生100人へのアンケートをもとに医師のキャリア形成について調査した結果を紹介していきます。
(参考)【国際医療福祉大学医学部の実態】、【私立御三家】日本医科大学は再受験に寛容!?【内部生告白】、【文理選択の方法】
1)医学部生の学生生活
とにかく忙しい
まず医学部生の学生生活で1番に思いつくのは「忙しい」でしょう。
大量の試験に課題、グループでのプロジェクトや実習、授業数の多さなど、医学部が他学部よりも忙しいのは疑いようもない事実でしょう。
しかし大学生らしい一般的なキャンパスライスを同時に送る医学部生も多いです。
実際には多くの医学部生が部活やサークル、学外コミュニティ、バイト、恋愛に日々打ち込んでいます。
調査で67%の学生がなんらかの部活またはサークルに所属しいていました。
また72%の学生がバイトをしていることが分かりました。
ただし部活・サークルに関しては過去問や先輩との人脈欲しさに入部している人も少なくないようです。
コミュニティが狭い
そして医学部生特有の学部の特徴としてコミュニティの狭さが挙げられます。
まるで村社会です。
1学年100人、多くても150人ほどしか学生がいない医学部ならではです。
また授業数が多く、みんなが同じ講義を受けるため、部活動やサークルを除くと他学部との交流が少ない場合が多いです。
しかし同時に、学生同士の関わりが多いため、学年・学部の団結力が高いのが特徴です。
医学部のつらさを共有できる医学部生同士のカップルも多いです。(その後結婚するカップルも少なくない)
2)医学部の志望理由
次に医学部生が医学部を志望し、受験し、入学する時点での医学部志望理由を100人に調査した結果を紹介します。
1位 医師になりたいから(45人)
2位 成績が良かったから(27人)
3位 周囲の人に勧められたから(12人)
3位 特に理由はない(12人)
確かに「医師になりたいから」という理由は半数を超え、多いです。
しかし、意外にもそれ以外の理由が半数近いことに驚きますね。
しかも「成績が良かったから」「周囲の人に勧められたから」「特に理由はない」という志望理由はどれも積極的なものではありません。
医師という職業の人気とイメージが高く良いことが原因となっているようです。
3)医学部生の将来像
では続いて実際に医学部に通う医学部生の描く将来像、将来の夢を調査した結果を紹介します。
1位 患者から信頼される医師になる(37人)
2位 腕のいい医師になる(32人)
3位 特に決まっていない(18人)
4位 医師以外のキャリアを歩む(12人)
こちらも「患者から信頼される医師になる」「腕のいい医師になる」などの医師としてのキャリアを描く場合が多く、全体の7割ほどを占めています。
しかし3割の医学部生は医師としてのキャリアを歩むかわからないという状態です。
さらに12%の学生は医学部に在籍していながら、医師になるという将来像を描いていないのです。
つまり意外にも医学部生のキャリアは多様性に富んでいるのです。
医学部生でも医師以外の職業を考慮しているということが分かります。
これは医師の労働環境の悪さが影響しているのかもしれません。
4)医学部卒業後のキャリア
では最後に複数ある医学部卒業後のキャリアについて紹介していきます。
①臨床医
はじめは最も一般的な卒業後の進路である臨床医です。
臨床医にも勤務医と開業医があります。
また初期研修が終わると開業が可能になるため、専門医研修に進まず開業する人もいます。
②研究職
次は学部卒業後に院に進学して研究者としてキャリアを進める場合です。
医学研究には、臨床業務に従事しながら研究を行う「臨床研究」と、大学医学部などにおいて研究専従で進めていく「基礎研究」があります。
そして臨床研究は医師免許を持っていないとできません。
しかし現在、医学部生全体の1%にも満たないのが現状です。
③産業医
産業医は一般企業へ就職する形でなります。
50名以上の従業員を抱える企業では専任の産業医を1名以上設置する必要があります。
産業医の魅力として、病院の勤務医に比べ労働時間が短く、大企業なら福利厚生も手厚いため、ワークライフバランスをきちんと保つことができます。
さらに外資系企業の産業医では勤務医よりも給与が高い場合も多いです。
④一般企業へ就職
③と一般企業に就職するという点では一見類似していますが、こちらは医師免許を生かさない形になります。
そして主な就職先ですが、日本の大手上場企業や外資系企業が多いのが特徴です。
医師の長時間労働や割に合わない給与に対する不満などが取り上げられる昨今、一般企業に就職するというのは悪くない選択肢になりつつあるのです。
⑤国家公務員(医系技官など)
医系技官とは、医師免許を有した国家公務員で、保健医療に関する制度づくりに携わります。
つまり日本で働く医師の労働環境や医療供給体制を左右する重要な決定に携わることができるのです。
例えば地域医療構想の推進、オンライン診療の推進、医師の働き方改革などが医務技官の仕事領域となります。
さらにこちらも勤務医よりワークライフバランスを確保できるのが特徴です。
(参考)医系技官とは(厚生労働省)
⑥起業
近年は医療系ベンチャーを起業する医師も増加しています。
なぜなら医療分野でのAIやICT活用が広がる中、医師免許を持つ起業家の需要が高まっているからです。
5)最後に
医師の労働環境問題が浮き彫りになる中、医師以外のキャリアとして多くの選択肢を知っておくことは非常に有用です。
そしてこれは医学部受験生にとっても役立つものとなるでしょう。
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